二作品やったんだから残りもやろう!!
でも眠気に負けて一日休んだレンシレンジです。
今回も大今良時先生の作品紹介。
三作の漫画を手掛けた先生の作品の中でも、おそらく最も知名度が高いであろう
をご紹介。
【こえのかたち】と読みます。蟹の形じゃないので気をつけて。
でも蟹の形で検索しても、ちゃんとこの作品が出てくる親切設計
アクションや恋愛ものとは一線を画す、道徳教材にすらなった漫画です。
あらすじ
主人公石田将也のクラスに転向してきた西宮硝子は聴覚障害者だった。
ノートによる筆談でみんなと仲良くすることを希望していた硝子だったが、ガキ大将のような立場にいた将也は彼女をからかいの対象と見てしまい、クラス全体を巻き込んだいじめへと発展する。
徐々にエスカレートしていったいじめにより、硝子の補聴器を捨てるという行為に及んだ将也。
結果、硝子の母親の通報により学級会が執り行われる。
そこでは、いじめの中心人物であった将也にすべての罪がなすりつけられ、一緒になっていじめていたクラスメイトや、放置していた担任の威圧的な糾弾がこだました。
当の硝子はその後転校してしまい、将也はクラスで孤立して逆にいじめの対象となってしまう。
いじめを受ける側になり、自己嫌悪と後悔に苛まれた将也は、贖罪のために手話を覚え、高校進学に再会した硝子と親睦を深めていくのだが……
あらすじ終わり
この物語は辛いよぉ?
最初に言った通り、この作品は道徳の教材に使われるほどの完成度を誇り、かつ説得力のある内容となっています。
その題材は、
いじめ
を取り扱っています。どっちも重大で
正直漫画で取り上げるタイプの題材ではない
いじめに関してはよくあるかも知れませんが、聲の形に関して言えば非常にリアリティのある設定なので、やはり異端と言わざるを得ません。
なので、読んでいて結構しんどくなる漫画であります。
特に第一巻は、主人公将也の原点となるいじめ問題をガッツリ取り上げているので、
この漫画を何度と無く繰り返し読んでいる私でさえ忌避する内容となっています。
ある意味完成度が一番高いのが第一巻で、いじめの内容に関しても
「あぁ……なるほど……」
と頷いてしまう物です。
確かにこういう奴らって周りに居たし、多分自分もその中の一人だったんだろうなぁ
と思わずにはいられません。
いじめって「いじめをしている」と言う自意識が欠如してるのが一番の問題なんですよねぇ。
話がそれたので漫画の話に戻りましょう。
第一巻が主人公の小学時代。第二巻から高校時代へと時間が進みます。
いじめを後悔し、償いがしたい将也が手話を覚え、硝子を探し出すところから始まります。
ただ、将也の考える贖罪が「最終的に自殺すること」なのが辛い。
もちろん、初っ端から自殺して終了という物語ではありません。
硝子と再会し、彼女と交友しているうちに贖罪の方法を考えるようになることが、物語の中心軸となっていきます。
贖罪とはなにか
聲の形をネタバレなしに紹介することのなんと難しいことか……
なのでかなり道徳的な話が中心となる今記事。
主人公将也にとって、最初の贖罪は【死んで償うこと】。
そして徐々に【硝子のために人生を費やすこと】と変化していきます。
ラブコメだったら弄り倒すような青臭い一コマですが、
この漫画はガチです
将也にとって硝子は罪の意識の塊であり、恋愛対象ではありません。
まあ、これが原因で途中ニヤニヤする事態に発展するのですが、それは是非読んで確かめてみてください。下手な恋愛マンガよりもニヤニヤ出来ます。
ともかく、将也は良くも悪くも硝子を生きる目的としていくわけです。
具体的には、硝子が当たり前に歩むはずだった人生を取り戻すため、かつての友人を探し出して、学生らしく遊んだり創作活動に勤しんだりするのです。
で、この漫画で絶えず問題提起されているのが
【どうすれば贖罪になるのか】
なのですが…………本当どうすれば解決するんでしょうね?
謝って終わり。
仲直りして終わり。
相手の人生を取り戻して終わり。
死んで終わり。
様々な方法が作品内で提示されていますが、やはり難しい問題。答えも人それぞれで千差万別あるでしょう。
一応、物語の最後に作品内での結論を出しています。私は中々納得の行く答えだと思いましたが、これも人によっては受け入れられない結論かもしれません。
読んでみて、どう感じるかは読者次第という漫画なのです。
漫画としての面白さ
道徳の話を中心にした今記事ですが、これは漫画のお話。漫画について書かねば意味がない。
というわけで、聲の形がどのように漫画として面白いのかを紹介します。
【不滅のあなたへ】【マルドゥック・スクランブル】で紹介したように、
大今良時先生は物語の構成と空間表現が上手い。
今作に関して言うと、
上げて落とす!
が非常に上手く使われています。
物語が上手く進み、ハッピーエンド間近で一気に落とされる恐怖。
それがきちんと物語にとって必然性を帯びているのが凄い。
恋愛漫画としてのベストエンドを取るのではなく、
リアリティ漫画としてのベターエンドを取った作品です。
空間表現について、この漫画は道徳漫画です。ヒューマンドラマと言っても良い。
しかし、なぜかバトル漫画並みに絵が動く。
この辺り先生の真骨頂。マルドゥック・スクランブルのカジノ編でも同じような現象が起きています。
不自然なほど大げさな動きをキャラクターにさせて、それが自然に漫画として馴染んでいるというのは凄いと思いますね。
ちなみに、硝子母によるとある行動は伝説的で、
バトル漫画の必殺技並みに迫力があります。
これは本当に必見。是非見て欲しい一コマです。いや二コマかな?
最後に
これまで散々【道徳的な漫画】と表現してきましたが、
これまでの記事とやや矛盾しているようですが、将也や硝子達登場人物の成長と、それによる心理的な変化がむず痒く、途中で書いた通りニヤニヤ出来るシーンがいくつもあります。
ネタバレが出来ないのが辛い。ああ本当……月が綺麗ですねぇ(意味深)
最後になりましたが、この作品は京都アニメーションによる劇場アニメ化されています。
かなり端折った内容なので、これだけを観て作品の全貌を知ることは出来ません。
ですが、非常に綺麗な絵でまとめられているので、ここから入って漫画を読んでみるのもオススメです。
ではまた!